日本生物学オリンピック2018 予選で出題された問題と正解・解説
問1の正解の変更について
HとJをともに正解とすることにします。理由は「正解・解説」に示しています。
得点分布
代表的な問題
問2)ある動物細胞のDNAの塩基組成を調べたところ,グアニンとシトシンの合計が全体の54%を占めていることがわかった。今,このDNAの2本の鎖のそれぞれについて塩基組成を考える。一方の鎖の全塩基のうちアデニンの割合が24%である場合, 他方の鎖におけるアデニンの割合は何%であるか。 その割合をA~Lから選べ。(3点)
A.14% B.16% C.18% D.20% E.22% F.24%
G.26% H.28% I.30% J.32% K.34% L.36%
問11)植物細胞における水の出入りは,細胞内外の浸透圧差と膨圧との関係によって決まる。気孔の孔辺細胞では,さまざまな環境刺激に応じて浸透圧と膨圧の変化が起き,水が流入または流出する。その結果,孔辺細胞が変形して,気孔が開いたり閉じたりする。
今,気孔が完全に閉じて安定している状態(Closed)と完全に開いて安定している状態(Open)を考える。Closed のCとOpenのOを添え字に使って,各状態における孔辺細胞内外の浸透圧差(細胞内浸透圧から細胞外浸透圧を差し引いた値)を DSCと DSO,各状態における孔辺細胞の膨圧を PCと POのように表記する。このとき,DSC,DSO,PC,POの間には,どのような大小関係が成り立つと考えられるか。もっとも適当なものをA~Fから選べ。(5点)
問13)ある地域の7種のトカゲの成体について,年間生存率と年間総産卵数の平均値をくらべると,両者の間には図にみられるような負の相関があった。
次の記述のうち,この図から導き出されるものはどれか。もっとも適当な組合せをA~Hから選べ。(4点)
- 成体になるまでにかかる期間が種間でほぼ同じであるとき,種1がもっとも長命である。
- 成体になるまでにかかる期間が種間でほぼ同じであるとき,種7がもっとも長命である。
- 他の要因を考えなければ,グラフは,繁殖をすることが生存に対してコストとなることを示している。
- 他の要因を考えなければ,グラフは,繁殖をすることが生存に対してコストとならないことを示している。
- 天敵による捕食のような,繁殖と直接関係のない要因で成体の生存率が低くなった場合,種1のような生活史に近づくのが有利である。
- 天敵による捕食のような,繁殖と直接関係のない要因で成体の生存率が低くなった場合,種7のような生活史に近づくのが有利である。
A.①③⑤ B.①③⑥ C.①④⑤ D.①④⑥ E.②③⑤ F.②③⑥ G.②④⑤ H.②④⑥
問22) 現存する全生物は,遺伝子の塩基配列の違いに基づいて,図1のような順序で3つのドメインに分かれたと推定されている。しかし3つのドメインに対する外群となる生物が現存していないために,3つのドメインの間の相互関係しかえられず,図2のような無根系統樹しかできないはずである。図1のような分岐順序を推定するにはどのような方法をとったらよいか。もっとも適当な方法をA~Fから選べ。(4点)
A.図2でバクテリアの枝がもっとも長いことから,バクテリアが先に分岐したものとする。
B.3つのドメインの共通祖先で重複した遺伝子をもちいて系統関係を推定する。
C.偽遺伝子がもっとも多いドメインが先に分岐したものとする。
D.外群になるような,絶滅した古い生物の化石からDNAを取り出して系統推定に加える。
E.もっとも古い生物の化石が原核生物であることから,バクテリアが先に分岐したものとする。
F.ゲノム全体の塩基配列をもちいてすべての相同遺伝子を比較する。