学びのなかに復興への意欲を
丸善出版より東日本大震災を被災した東北地方の学校に「キャンベル生物学」を寄贈
拝啓
このたびの3月11日に発生しました東日本大震災により亡くなられた方々のご冥福を衷心よりお祈り申し上げますとともに、被災された皆さまに心からのお見舞いを申し上げます。
今般の大震災では、インターネットやテレビがおもな情報源となりました。その即時性をもって、地震や津波の影響や福島原発事故による放射線被害の情報は瞬く間に世界に広がりました。これらメディアは、ビジュアルで即時的な波及効果がある一方で、言葉の重みはあまり重視されないためか、時に事の重大さ、的確な判断を下すことを阻害する情報が流れることもありました。
そのような状況のなかで、出版社として私たち丸善出版は、被災地や被災者の皆さまにむけていったい何ができるのかを考え、一部書籍のページをネット上に公開し、「よく読み、自らが判断する」お手伝いをさせていただきました。
本は、書き手の伝えたい思いに編集者の客観性が加わることで言葉に重みが加って刊行されます。そして学術書、専門書は、何が普遍性をもった事実かを突き止めようとすることのできる情報源として機能しております。また、ひとたび手に取れば、その後はほとんどエネルギーを必要としないメディアでもあります。「これから私たちはどこへいくのか」を考えるにあたって、もっともふさわしいメディア/情報源であると自負いたしております。
今回お手元にお届けする『キャンベル生物学』は世界各国で最高の評価を受け、多くの学生に親しまれている生物学の定番教科書です。「国際生物学オリンピック」の公式推薦図書にも認定され、毎年世界中の高校生がその金メダルを目指し、本書を使って勉強しています。ささやかな冊数ではありますが、本書を寄贈させていただきますので、勉学の友としてどうぞお役立てください。
本を読むのに多くの電気は必要としません。本は時間さえあれば、いつでもどこでも読むことはできます。ご不便な生活が続くことと推察いたしますが、ぜひ本書をじっくり読んで学びのなかに復興への意欲をかきたてていただければ嬉しく存じます。
以上、はなはだ略儀ではございますが、書中をもちましてお見舞い申し上げます 。
末筆ながら、皆さまの一日も早い復興を切にお祈り申し上げます。
敬具
平成23年6月23日
丸善出版株式会社
代表取締役社長 吉田 明彦