日本生物学オリンピック 2011 予選

予選会場

東日本大震災被災にかかわる日本生物学オリンピック2011の 予選特例会場の制限の緩和

 東日本大震災の被災地における日本生物学オリンピック予選の特例会場の制限を次の通り緩和します。

  • 以下の被災地では、特例会場の設置について参加希望人数が30人に達しなくて可能とします。但し特例会場を設置するにあたっては、試験会場責任者(予定)とJBOとの協議を必要とします。
  • 対象被災地は、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の5県とします。

出題された問題と正解・解説

    

  • 予選問題( PDF 1.9 MB)
  • 問20)の問題文中に 
    「①~⑥の記述のうちで,実験結果から考えられることとして正しい組合せは,A~J のどれか。」
    とありますが、正しい冒頭部分は 「①~⑩の記述のうちで」でした。

    このため 問20)については全員を正解とします。

  • 正解と解説( PDF 0.8 MB)
  • 問20)の本来の正解は 上の正解と解説に示すとおりです。

予選得点分布

代表的な問題

問9)光合成器官である葉の老化では,通常バランスを保っている葉緑体タンパク質の合成と分解の平衡状態が分解の方に傾くため,クロロフィルが減少して黄化が起こる。植物体から切り離した葉は暗所に置いておくと急速に老化するが,その際,サイトカイニンを葉に与えると老化が抑制される。また,ダイズでは秋に種子が成熟してくると葉の老化が進むが,受粉後に育ってくる若い鞘(果実)を順次摘み取ってしまうと葉の老化が遅くなる。この葉の老化は根で合成されるサイトカイニンによって抑制されると考えられている。ダイズをもちいた老化の実験に関する記述として適当と考えられるものの組合せをA~Hから選べ。なお,道管中を流れる液を道管液とよぶ。(4点)

① 道管液に含まれるサイトカイニンの量は,鞘がつく前は高いが,鞘が育ってくると減少する。
② 道管液に含まれるサイトカイニンの量は,鞘がつく前は低いが,鞘が育ってくると増加する。
③ 鞘をとると,道管液に含まれるサイトカイニンの量の減少が抑制される。
④ 鞘をとると,道管液に含まれるサイトカイニンの量の減少が促進される。
⑤ 鞘をとると,道管液に含まれるサイトカイニンの量の増加が抑制される。
⑥ 鞘をとると,道管液に含まれるサイトカイニンの量の増加が促進される。

A. ①③  B. ①④  C. ①⑤  D. ①⑥  E. ②③  F. ②④  G. ②⑤  H. ②⑥

 

問21)カイコガの成虫では,雄が雌の発するフェロモンに反応して,羽ばたきながら歩き始め,雌に近づいていく。この羽ばたきは婚礼ダンスとよばれる独特の行動である。すなわち,普通みられる昆虫の羽ばたきは脚が接地したままでは起こらないが,フェロモンによる羽ばたき(婚礼ダンス)では脚が接地し歩きながらでも起こる。この行動を調べるため,次のような実験をおこなった。

【実験と結果】
Ⅰ.雄の触角を切り取ってみると,フェロモンに対する行動をまったく示さなくなる。
Ⅱ.フェロモンに反応して羽ばたき始めた雄の触角を切り取っても,羽ばたきは続けたままであった。
Ⅲ.Ⅱの羽ばたきをしている雄の頭部を切り取ると,羽ばたきはすぐに止まった。
Ⅳ.Ⅲの頭部を切り取った雄の翅を持って吊り下げると,羽ばたきを開始し,再び床に戻すと羽ばたきをやめた。
Ⅴ.フェロモンの刺激を与えない雄を吊り下げると,羽ばたきをしたが,床に戻すと羽ばたきをやめた。

フェロモンによる羽ばたき行動についての記述と実験Ⅰ~Ⅴの結果をから考えて,明らかに否定される説明はどれか。否定される記述の組合せになっているものをA~Iから選べ。(3点)

① カイコガの雄はフェロモンの刺激を触角で感知する。
② フェロモンによる雄の羽ばたき行動は,フェロモンを刺激とする反射行動である。
③ フェロモンによる雄の羽ばたき行動は,中枢神経(脳)からの指令によりおきる。
④ 普通みられる(フェロモンによらない)昆虫の羽ばたきが脚からの刺激で抑制されるのは,反射行動と考えられる。
⑤ フェロモンによる羽ばたきは,脚からの抑制を受けない。
⑥ 脚からの刺激による抑制とフェロモンによる行動では,脚からの抑制のほうが優先される。

A. ①④  B. ①⑤  C. ①⑥  D. ②④  E. ②⑤  F. ②⑥  G. ③④  H. ③⑤  I. ③⑥

 

問27)3つの遺伝子座(PRS)について,右下の図のような母,父,姉,弟の4人家族の遺伝子型を調べたところ,次のような結果をえた。


  結果(各個体の遺伝子型)

遺伝子座 個体1 個体2 個体3 個体4
P P1P1 P1P2 P1P2 P2P2
R R1R1 R1R1 R1R1 R1R2
S S1 S1 S1S2 S1S2

 
figure

この結果から個体1~4はそれぞれ誰と考えられるか。正しい組合せをA~Jから選べ。ただし,突然変異はなかったものとする。(3点)

 

個体1

個体2

個体3

個体4

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

 

正解と解説

問9)【正解】A
【解説】葉を植物体から切り離すと,老化抑制ホルモンであるサイトカイニンが根から道管液を介して供給されなくなるため老化が進みやすくなる。また,クロロフィルなどの葉緑体タンパク質の遺伝子発現は光によって誘導されるので,暗所ではそれらのタンパク質が合成されず,老化が進む。一方,花が咲いて果実が形成されると枯れてしまう植物(一回結実性植物)であるダイズでは,鞘の中に形成されてきた若い種子によって生産されるシグナル(未同定)が根にはたらきかけて,根におけるサイトカイニンの生産を抑制することで親植物の老化を促進すると考えられている。

問21)【正解】F
【解説】 触覚を切り取るとまったく行動を示さなくなることから,フェロモンを感知するのは触覚であることが予想される。フェロモンの刺激により羽ばたいている雄の触覚を切り落としても羽ばたきを続けることから,触角からの感覚ニューロンが運動ニューロンに直接つながるような反射によるものではないと考えられる(②の否定)。次に頭部を切り取ると羽ばたきがやむことから頭部の中枢神経からの指令が関係することがわかる。一方,普通に見られる昆虫の羽ばたきは接地すると抑制されること(Ⅴ),頭部を切り取った雄の羽ばたきもこの抑制を受けること(Ⅳ)から,反射的なものであることが予想される。さらに,フェロモンによる羽ばたきでは肢が接地し歩きながらでも起こる(本文)が,フェロモンの刺激を受け取った個体でも,その情報が頭部から伝わらなくなると,接地による抑制を受けるようになること(Ⅲ)から,フェロモンによる行動の方が優先されていると考えられる(⑥の否定)。

問27)【正解】F 【部分点】J
【解説】遺伝子座SはX染色体上に位置していると考えられ,個体1と2は男性,個体3と4は女性であると判断できる。遺伝子座Rでは,個体4だけが変異をもっている。したがって,個体4は親である。この結果,個体4は母,個体3は姉である。個体4が母であるとき,遺伝子座Pより個体1は弟ではないことがわかる(P2P2の親からP1P1の子は生まれない)。したがって,個体1は父であり,個体2は弟である。以上の結果,Fが正解である。

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